身体呼吸療法とは

体と海の類似性

身体の中は、海と似ています。身体に触れていますと波のような呼吸の動きがあり、身体の内部では潮の動きのような力動性があります。海から陸上にあがって進化した人間ですから、海の環境と似ていて不思議ではありません。古代の海の動きが身体にリズム性として刻印されています。本来の自然のリズムと調和して生活することの大切さを示しています。施術をしますと、リラックスしてきて呼吸はゆったりとしてきます。そしてしだいに横隔膜の呼吸運動に変わり、入眠に似た状態になります。
呼吸がフッと転換するかのように、お臍(へそ)の下から自然に呼吸が始まり、お腹から胸へ、そして顔面へと拡がってゆく動きが起こってきます。赤ん坊の呼吸と同じです。オギャーと泣く息はハラからきていますから、ハラ呼吸と呼ぶこともできるでしょう。

ところで、私たちは胸であるいは肩で呼吸していることが一般的ではないでしょうか。こうした呼吸は本来の呼吸ではありません。
本当の呼吸と言いましょうか、横隔膜がゆったりと動いて深く息が入る呼吸は、実は寝ているときに起きます。何かに頭を使っている状態では、横隔膜はほとんど動きません。脳幹にある吸気ニューロンがあまり活動しないからです。そのために、胸の筋肉や頸の筋肉を使って呼吸しているのです。特に、非常に緊張状態が続いたり、長時間にわたってコンピュータの画面を覗き込んでいるような状態では、こうした本来の呼吸を忘れてしまいます。

睡眠の重要性

睡眠はとても大事です。深く熟睡状態に入れないと、寝ていても本来の呼吸運動が起きてこないからです。朝、起きても疲れがとれていないのは、深いハラ呼吸が起きていなかったからです。

身体呼吸療法ではこうした本来の呼吸を誘発させることが、施術の目的となっています。身体が一つになって頭から足の指の先まで力動性が現れる仕組みが身体にあることから、身体の呼吸すなわち身体呼吸運動と呼ぶようになりました。

身体呼吸運動を、独特の施術方法で誘発し、全身の体液の流れを引き起こしますと、まるで身体の中で寄せては引く潮流のような力動性が現れます。筋膜で被われた筋肉と筋肉の間隙はもちろんのこと、末梢の神経の束の中でも体液の流れが起きてきます。こうした体液の灌流は、組織・細胞に潤いを与え、酸素や栄養を運び込み、疲労物質を取り除いてくれます。健康回復するためにいかに大事か、容易に想像ができるかと思います。

病気を克服するための免疫細胞は血管から出て細胞・組織の間隙を巡っていますので、リンパ液や間質液の流れを促す身体の潮流はきわめて重要なことと考えています。
※身体呼吸療法とは、オステオパシの頭蓋療法の第一次呼吸機序を基に、武道や能などのハラ呼吸を融合させて創り出した施術方法です。この方法は大場弘オリジナルです。

不眠症や欝について

不眠症は欝のときによく起こります。身体呼吸療法からみますと、脳脊髄液の揺らぎがなくなっているときに不眠が起きているようです。また、欝の方の頭を触れていますと、脳の呼吸運動がかなり乏しく、とても重く感じられます。さらに状態が悪いときには、この独特の重い感覚は全体的に感じられます。とくに、下腹部の呼吸運動がまったく起きておらず、肩甲骨の間もかたく歪んでいる特徴がみられます。お腹の呼吸運動を促し、頸胸部の歪みをとりながら、体を弛めていきますと、しだいに、頭蓋の呼吸運動とともに、内部(脳)にも揺らぎが生じ、施術している間に意識が遠ざかるように寝てしまいます。このようにリラックスできるようになりますと、夜も自然に眠られるようになります。しかし、中には簡単に運ばない患者さんも少なくありません。

一生懸命に取り組みために、息を止めて集中する傾向があり、そうしたことが慣れっこになってしまって気づかずにいます。

寝よう寝ようとがんばりすぎるのも逆にいけないのです。
わきあがる心の雑念、さまざまな思いや悩み事全て独り言です。

独り言というおしゃべりをいったん止めてみてはどうでしょうか?そのときの静けさが、いわゆる無と表現できる状態です。
心を無にするということは、心のおしゃべりを止めることなのです。